ドラマ版孤独のグルメ、今更1話を見たがめちゃくちゃ面白いじゃない。一つ不満があるとすれば、序盤の前フリのテンポの悪さがきになる。おばちゃんのマシンガントークはいいが、アンティークショップは別になくてもいい。古物商とアンティークショップでかぶっちゃってるし、うっかり豚料理を2つも頼んじゃったゴローちゃんみたいな心境になっちゃったぞ。思うにこれは、後半のお店紹介コーナーの尺をうまく調節すればいいんじゃないのか、って思うのだが。
とはいえ、グルメ番組を長年撮り続けてきたテレ東の撮影技術のすべてが注ぎ込まれているのに驚く。漫画のドラマ化ではなく、あくまでも新作エピソードという体裁。ロケ先の店舗は実在するお店なんだけど、局のスタッフが自分で探しに行ってるもので、原作者も知らない店という。もうこの時点で力の入れどころがわかっている!
松重豊の演じるゴローは目に力がありすぎて怖いのだが(『似てない』とあちこちで言われるのはこの眼力のせいだろう)、さらに言えば声にドスがきいているのでやっぱり怖いのだが、あの意味のないぼやきがきっちり再現されていたのでよし。ああ、でも、最近のコメディドラマにありがちな大げさな演出は別にいらないぞ。それは漫画の繊細な絵がもつイメージにはあわない。
しかしまあ、ドラマ化したのがテレ東でよかった。もうあの焼き鳥の映像だけで大迫力。漫画の緻密な描き込みもすばらしいんだけど、グルメ番組ロケで培われた実写映像の有無を言わさぬ説得力もそれに負けてない!
テレビというとどうしてもスポンサーやら何やらのシガラミで、何らかの宣伝を入れなきゃいけないような雰囲気になってしまいがちだが、どうしても必要なら番組後半のミニコーナーで原作者が自分でやるからいいのだ! この開き直りもいい。「わざとらしいメロン味のするマイナー炭酸飲料」とか、「コンビニの惣菜」みたいな回だったらどうすんだろ? とは思うが。
 
「感動した」「泣けた」という感想を持つ作品だけがいい作品みたいな風潮がはびこるなかで、「腹減った」が最高の賛辞になる感じのドラマ。ああ、腹減った。