FF12って洋RPGJRPGに取り込んだらどうなるか、という試みにおいては極めて重要なポジションにあるゲームだと思う。同時に、日本のプレイヤー(とくにミドルユーザー)がRPGに何を求めていたのか、そのすれ違いがどのような悲劇を生んだのか、ということを知る手がかりとしても。
隠された設定の数々や、何気ない会話シーンの裏に隠された重要な意味など、FF12はプレイヤーが能動的になればなるほど奥深いタイトルである。ゆえに、普通のRPGの感覚で漫然とプレイしていただけでは、なんだかよくわからないうちに終わってしまうという難点も抱えている。この動画シリーズでは、そんな「見過ごされてきたFF12の隠された魅力」にスポットを当て、丁寧なナレーションと凝った演出、丁寧な編集でそれらを紹介している。「1度クリアしたけど、何が面白いのかよくわからなかった」という人にはうってつけだろう。
しかしまぁ、これだけ膨大な設定を用意しておきながら、そのほとんどがプレイヤーに知られることなく埋もれていった、というのは、いかに日本のプレイヤーの多くが「受け身」の姿勢でのプレイに慣れているか、ということでもあるよなぁ、とか。サクッと遊べるゲームは貴重だし、ゲームとは所詮娯楽にすぎないのだから、別にそれが悪いことではないのだけど。ただ、もしこれらの設定がもっとふんだんにメインストーリーに取り入れられていたら、世間でよくいわれるストーリー面での批判も、少しは和らいでいたのではないだろうかなぁ。
あるいは、当初の予定通り制作が進んでいたなら、FF12も終盤以降打ち切り漫画のように尻切れのまま埋もれていった設定の数々が、メインストーリーの中で明らかにされていったのかもしれない。

機動戦士ガンダムAGE 第6話 ファーデーンの光と影

今回はオーソドックスな話。ΖΖやXなんかによく有りそうな回だと思った。なんか評判は悪いが、大筋としてはこの方向性でもいいとは思う。これがデス種なんかだと「大筋の時点で何とかしろ」というレベルだから、「今のところは」そこまでひどくは無いと思うのだけどね……(というか、デス種は中盤のキラ一行の行動がデタラメすぎて、そこから連鎖的に全体がおかしくなっているので、そこをまず変えないとどうにもならないのだけど)。
視聴者の不満がたまりやすいのは、表現が拙すぎてその大筋に説得力を持たせるに至っていない、ということなのだろう。現状ではサブタイトルにある「光」も「影」も、中途半端にしか見えない。
以下ネタバレ感想
描写の粗さについて色々とツッコミがありそうだが、レベルファイブは紋切り型の表現しかできない、っていうのは今更だしな。デスペラードで戦闘に殴りこむおっちゃんとか典型的だなぁ。あそこは内戦でスラムに追いやられた住民がどれほど苦しい生活を送っているか*1、それによって両軍にどれほどの恨みを抱えているのか*2、っていうことをていねいに描写して、とうとうおっちゃんの積もり積もった怒りが爆発したのだ*3、というふうに表現しないと、おっちゃんがただの向こう見ずなアホになってしまうじゃないか。ボロい家を描けばそれで満足なのかもしれないが、あれだけじゃ「戦闘が起こったら地下へ逃げればいいだけじゃん、なんでキレてんの?」って視聴者は思ってしまう。毎回毎回思うんだけど、なんでもかんでもテンプレに任せすぎて基本的な積み重ねができてないのがこの作品の一番の欠点だ。レベルファイブ作品全体に当てはまることだが、ご都合主義的展開がよくないのは、物事の道理、因果関係が正しく受け継がれていなくて、次に発生する事件や物事に対して視聴者が正しく反応できないからなのではないかとおもう。
それから、遮蔽物があまりないとはいえ、アメリカ独立戦争よろしく向かい合ったまま直立不動で撃ちあうのはいくらなんでもねえよ、とも言いたくなる。初心者のやるFPSですらもう少し撃たれないように考えて動くだろうに。よく外人にバカにされる典型的なJRPGの戦闘シーンをまんまアニメで再現してどうするのか。作画枚数が足りないせいかもしれないが、それならMSで直接殴り合ってくれたほうが、地域住民も迷惑しているということが伝わって説得力が出るわい。なんでわざわざダメな表現を選ぼうとするんだ。
そして、6話目にしてようやく重要設定が出た。宇宙戦国時代の終わりと共にほとんどのMSは破棄され、【国家間の戦争】という概念は人々の記憶から薄れていった。しかし、一部では残党勢力による小競り合いが続いている、と。この設定、作品の根幹に関わる重要な部分なのだから、もっと早いうちに説明しておくべきだったんじゃねえの、と思う。1話の学校のシーンあたりで、先生やクラスメイトたちにこういう説明を交えながら、必死なフリットに対するツッコミをさせておけば、連邦軍や一般市民に危機感がないことやフリットがそれでもなおガンダムにこだわる理由をもっとスムーズに説明できたと思うんだが。それが尺的にムリだったとしても、エミリーにひとこと「地球連邦のおかげでもう戦争の時代は終わったのよ。何もフリットが戦うことないじゃない!」とでも言わせておけば、それだけでじゅうぶん説得力が出たと思うのだが。ああ、本当にもったいない。
ところであのスラム街、FF7っぽくてちょっと好き。しかし、宇宙世紀でお馴染みのオニール型だと、あの内壁と外壁の間に人が住めるどころか、MSさえも通れるだけのスペースを確保できるとは思えないのだけど、そのへんの問題はどうやって解決しているんだろうか、ちょっと気になる。あのへんのスペースというとポケ戦でアルとバーニィが外壁側から潜り込んでいたシーンがあったけど、あれだと人ひとり通るのがやっと、って感じだったな。あの作品だとすぐに連邦軍基地に入ってしまうから、それと混同しているのかもしれないが、どっちにせよあんなに広いスペースはリーアにはなかったわけだし。どっちかといえば円柱の底の部分のほうが不法居住地域としてはありえそうな気がするんだけどな。ユニコーンでは逆に円柱のてっぺんの部分にビスト家の屋敷があったりしたが、あれは秘密を大量に抱えたビスト家だからこそ、人目につきにくいところに屋敷を構える必要があったからだろうし。AGEのコロニーでは、オニール博士の時代から40年経った今の科学だからこその表現を見せてほしいなぁ。
それからいっつも疑問に思うのだけど、UEはどっからあのコロニーの内部に入ってきているのだろう。他のシリーズでも18メートル級ものMSをコロニーにこっそり潜入させるっていう無茶をやっている作品は少なくないのだが、コロニーの警備って基本的にどの作品でもザルなのだろうか?
今週のウルフさん:通路になんか駐車したらダメですよ。っていうかそれ、軍の備品じゃなかったっけ? 艦長からはほぼ完全に忘れ去られているようだから、このぐらいは朝飯前なのかも。それでいいのかウルフさん。

*1:たとえばおっちゃんの差し出したお茶がめちゃめちゃまずくて、「こんな物しか出せなくてすまないな」って申し訳なさそうな顔をするおっちゃん、そんなお茶でもほしがる娘の顔を見て戸惑うフリットたち、ってカットを挟むとか……

*2:たとえばおっちゃんの隣に住んでいる住民の性格が貧困のせいでねじ曲がっちゃってて、「こんなよそ者に構っている余裕が、あんたにはあるってのかい! それともあんた、上の連中からなんかもらってんじゃないの!?」的なイヤミを吐いてくる、とか……

*3:たとえば「無茶はやめてください!」と止めに入るフリットに、「もうこんなのはたくさんなんだ、娘にいつまでも上のくだらない争いに怯えて生きろっていうのか!? 娘の将来のために立ち上がることもできないで、何が父親だ!」と思いをぶちまけるおっちゃん、それに向かって「あなたは親のいない悲しみを、あの子にまた味わわせるつもりですか!?」と、自分の境遇ともダブらせながら説得しようとするフリット、とか、そんなやりとりをみて「私だって、フリットが無茶をするのを見たくないわよ……」とひとり涙ぐむエミリーとか……。