平林氏はゲハブログを潰したいわけでもなければ、ゲハブログの管理人に制裁を加えたいわけでもなく、ましてや2chを監視・検閲したいわけでもないわけだな。くわえて、ゲハブログの背後に企業がいて金を出してああいう記事を書かせている、という噂に関しては少なくとも平林氏の知る限りではありえない、と。別に事実だったとしても、平林氏はそれを暴露したいわけでもないようだから、そういう単純な対立構造に持ち込むのはお門違いとみるべきだろう。まあ、個人ブログだろうがなんだろうが、故意に虚偽の情報を流されてそれによって不利益を被るなら、堂々と訴訟を起こすべきだと思うけどな。
じゃあ、結局氏は何をしたいのか?
平林氏はきわめて慎重に言葉を選びながら記事を書いているので、背景となっている事情を知らないとよくわからない事かもしれない。前回の投稿からちょっと考えてたら、その後平林氏が補足的なことをツイッターとブログで語ってらしたので、そのことと照らし合わせて俺の考えを書く。
むしろあの提言は業界の内部に向けられたものでもあるということだ。特にゲームライター業界。もともとゲームメディアっていうのは、メーカーとの談合に近い形で、一種の提灯記事めいた内容の記事ばかり載せてきたという事実がある。それは平林氏もブログで指摘しているとおりだ。

広報する側も、取材する側も
http://hisakazuhirabayashi.blog95.fc2.com/blog-entry-931.html

俺だってファミ通クロスレビューは8点以上は全部嘘だと思ってるぐらいだしな。その反動として、ああいうブログが台頭してきたというのが平林氏の考えであるわけだ。
だったら、文章のプロとしてゲーマーの信頼を取り戻そうぜ、あんなコピペブログに客を取られて恥ずかしくないのか? 俺達でファミ通やゲハブログを超える新しいゲームジャーナリズムの潮流を産み出そうぜっていう提言なわけだ。
俺がAVGNやクソゲーオブザイヤーを好きなのは、ただクソゲーをけなすだけではなく洗練された文章とセンスで笑わせてくれるからであり、更にそこにウソを混ぜてはいないからだ。AVGNは演出上誇張表現を取り入れることはあっても、それは誇張だとわかるように演出されている。クソゲーオブザイヤーの選出には極めて厳しい審査があり、虚偽の内容が含まれていたら容赦なくボツとなる(ただし、間違えることはある。エルヴァンディアゴーとか)。そういう気骨あるライターがいまプロの世界にいるのか? っていうと、どうも今ひとつ元気が無いような気がしてならない。ファミ通一強の時代が長く続きすぎたせいかもしれない。昔ゲーム業界の広告を一切排除して忌憚なき記事を載せる! っていうコンセプトの「ゲーム批評」って雑誌があって、一時期購読してたことがあったんだけど、結局あれも廃刊になっちゃったしなぁ。俺が逆転裁判を知った雑誌ってことで良質な記事もあったが、いま思えば2chの煽りスレみたいなしょうもない記事も少なくなかった記憶があるので、ネットの発達とともに役割を終えたってこともあるんだろうな。ってことは、と同じ事をやってもうまくいかないかもしれない。平林氏がどういうメディアづくりを目指しているのか気になるところだ。
もう一つ俺の大好きなスレがあって、ゲサロ板にある「天界スレ」っていう所なんだけど、ここはもともとゲハ板の醜い争いにつかれた住人が、「もう争うのはいやだ! 俺たちはもっと面白いゲームの話をしたいんだ!」って言って始めたスレで、そこはとにかく好きなゲームを人に勧めまくるスレになってる。それはもう船幽霊が柄杓で水を注ぐがごとく。隠れた名作を探すにはこの上なく便利なスレなのでちょくちょく覗いている。企業によるサクラも住民の中に紛れているのかもしれないが、少なくとも煽りブログのようなゴシップ系ステルスマーケティングよりは健全だろう。
なんつうかな、いま求められてるのって、「褒めるべきところは褒めて、批判すべきところは批判する」っていうあたり前の事なのかもしれないな。それができないから世の中おかしいことになるんだろう。



え!? 平林さんって64ドリーム創刊号のスーパーマリオゲームデザインの記事書いた人だったの!? 俺あの記事にどれだけ影響されたかわからないくらい影響されまくってるんだけど……。
わからない人のために説明すると、こんな感じの考察が96年当時のゲーム雑誌に載っていたのである。

マリオ研究 Crown Archive
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Sunnyvale/6160/newtech/smb111.htm

このサイトではワールド1-1全体を通して考察しているが、平林氏はなんとそれを最初の三画面(最初の土管を飛び越えるぐらいのところまで)で、確か2ページくらいかけて丁寧にやっているのである。ネットも普及してない時代にそこまで突っ込んだ考察をできるものすごい人なのである。
平林氏が関わっていたというファミコン必勝本は読んでなかったのだけど、まさかこんなところで氏の名前を知ることになるとは……。