鬼帝降臨


三ヶ月半という史上最長の選考期間を経てついに2010年版クソゲーオブザイヤー受賞作が決定した。この動画は三部構成になっているので中編からは元サイトで見てほしい。こういう仕様になっているのは10分刻みにするのが一番コメントを多く表示できるためだと思われる。
日本では去年ぐらいから市場の中心が携帯機に移っていることもあり、大量のクソゲーが発売され選考は混迷を極めた。個人的にはプーペを推したかったのだが、鬼帝の受賞理由もごもっともだと思うのでまずは選考者に敬意を表したい。
 
それでは前回の据え置き版に引き続き、ノミネート作の解説を行うこととしよう。

アクエリ

 このシリーズ、以前にSW2.0も題材になってた記憶がある。国内最大のTRPGゲームブック化といえば聞こえはいいが、実態はゲームブックとは程遠い三流AVGだったようだ。そもそも企画自体に無理があったんじゃなかろうか。
 

大戦略×2

 もはや王者の貫禄と言っていい二作。開発ラインをDSかPSPのどっちかに絞って完成度を上げるという選択肢はもはや存在しないところから見ても、メーカー自体自転車操業状態になっているのは明白である。自業自得といえばそれまでなのだが。なにげにグラフィックもひどくないか……? 特にマップチップなどファミコン時代以下じゃないか。海岸線ぐらいちゃんと描け、ドラクエ1じゃないんだから。
 DS版の土下座外交について。このゲーム、他勢力との友好度によってシナリオが分岐するという内容だったようなのだが、友好度が高すぎると別の勢力のシナリオに行ってしまう。しかもよりによってその勢力の最初のステージから始まるため、無限ループ地獄を味わうハメになるのだ。ループを防ぐためには、シナリオ分岐が起こらなくなるまで友好度を下げる必要があるのだが、そのための方法が「降伏」以外に存在せず、よって開戦即降伏という意味不明な攻略方法を取らなければゲームを先にすすめることができなくなっているのである。
 あと思考時間の長さについては、現代においてはハードスペックの問題ではないと思うんだよな。明らかにプログラムの不備。ちなみにPSP戦極姫2のほうはXBOX360版と違って致命的なバグはあらかた取り除かれているようだ。そりゃあれだけ出しまくってりゃ当然だろうが(PC版1→PS2版1→PSP版1→PC版2→XBOX360版2→PSP版2)。去年のKOTYダブル受賞の汚名挽回(笑)に社長がやっきになるあまりにそっちにリソースを割き過ぎて、大戦略の作りがおざなりになった、なんて笑えないドラマが妄想できてしまうところが怖い。
 

戦国ラバーズ

 携帯アプリで追加シナリオ、みたいな商法に味をしめた結果がこれなんだろう。
 

どんだけ

 もともと海外で販売されたソフトのローカライズなのだが、こういうソフトを見ると洋ゲー市場も修羅の国なのだなぁ、と。日本に入ってくるソフトは向こうで高い評価を受けたソフトが多いから、相対的に欧米が宝の山のように見えるだけで、その底には無数の屍が存在しているということは常に肝に銘じておかなければならないだろう。
 なお、動画ではこのゲームがどうクソなのかは伝わりにくいのではないかと思う。「絶対SIMPLE主義」というブログが101種目すべてをレビューしているので興味のある方はご覧頂きたい。「タッチペンだけで簡単操作!」という、ライト向けDSゲーにありがちなコンセプトを誤解しまくるとこうなるという見本である。ほとんど何もしなくても勝てる種目もあるし。
 

プーペ

 前作はそれなりに好評だったらしい。アルヴィオン自身も、DSiウェアではかなりの力作を発売しており、開発力のないメーカーだったというわけでもない。
 そもそもこのゲームの問題点はすべて「デバッグ不足」に起因するものである。発売日を延長してでもバグを取り除いてさえいれば、ここに名を連ねることもなかったであろう。それでも発売を強行せざるを得なかった背景には、マクドナルドをはじめとする各会社とのコラボレーション戦略があり、それらのスポンサーとのしがらみがあったのではないかと推測される。もともとがSNSサイトからスタートしているだけに、様々な会社の思惑が働いた結果、このような強引な発売に至ったのであろう。
「売り逃げ」を恒常化し、すべての責任を小さな開発会社に押し付ける業界の病理がここにあるといえる。
 

鬼帝

ボールの理不尽な挙動について。ブロック崩しでは永久ハマリを防ぐために、ボールの反射にある程度のランダム性を持たせている。おそらく開発者はこのルールを誤解したために「どこへボールが飛ぶかわからない」というレベルにまでランダム性を拡大してしまったんじゃなかろうか。あと各ステージの内容を見るに、アイデアだけはだすけどそれを実装したらどうなるか、という所まで想定してなかったのだろう。「暗闇ステージ」とかは俺も考えたことあるけど、それをブロック崩しに乗せたらゲームが成立しなくなるってところまでは考えが回らなかったのだろうな。鬼弾幕を張る砲台などはその最たる物。要するに小学生がエディットモード付きのゲームで作る理不尽ステージ(ジャンプ台だらけのエキサイトバイクとか)のような発想で商業作品を作ってしまった、というのがこのゲームの本質であろう。I Wanna Be The Guyや改造マリオのような理不尽な難易度をネタにしたゲームはネット上には山のようにあるが、プロとアマの間で絶対に超えてはならない一線というのは存在するんじゃないかと思うのだよ。
 
最後に総評まとめについて、ちょっと不満があるのでツッコミを。「たけしの挑戦状」は当時の技術ではたけしの世界観を表現しきれなかったためにあのような歴史的クソゲーになったのであって、一連のノミネート作のようなクソゲーとは趣が違う。じゃあどのような傾向のクソゲーが出ていたのかといえば、採用されなかった方の総評案に俺の考えに近いものがあったのでそこから引用したい。

振り返ってみれば、今年はどこかゲームを出し急いだ一年だったのではないかと思う。
アクエリは一週間、いや二、三日あれば、かなりの問題点を解決できたはずだ。
鬼帝はちょっと冷静になれば、自分たちが作ったバランスがおかしいことに気付いただろう。
大賞作プーペだって画面を一通りチェックしてみる暇くらいできただろうし、
もしかしたらファッションショーをマニュアル通りにしたほうがいいと気づけたかもしれない。
システムが難しい大戦略や移植・ローカライズの戦国&どんだけはともかく、
他のソフトはたった一歩発売前に立ち止まって冷静になる時間があれば、
ここのお世話にはならなかったものばかりだ。

しかし、どこもそれができなかった。
不況と言われる昨今、立ち止まったら倒れてしまう恐怖心と戦ってゲームを作っているのかもしれない。
しかし、企業はそんなときほど誰かが立ち止まり、冷静に周りを見る勇気が求められているのではないだろうか。

最後に、今年発売されたクソゲーを生みだしたメーカー諸氏へ日本で一番有名な先生、
金八先生の言葉を送り、総評を締めくくりたい。
「正しいという字は「一つ」「止まる」と書きます。
どうか一つ止まって判断できる人になって下さい」
 
携帯ゲーム機版クソゲーオブザイヤーWikiより
http://koty.sakura.ne.jp/handy/index.php?2010%C7%AF%20%C1%ED%C9%BE

おそらくこの総評案ではプーペを大賞作に推していたために不採用となったと思われるが、2010年のクソゲーたちを端的に示した言葉ではないかと思う。
こと娯楽産業においては、震災の影響でますます景気が悪化する恐れもあり、今年はこれ以上のクソゲーが生まれてしまう事のないように祈りたいが、うーん。