ドラクエ珍説を提唱してみる その2

 
・なんで卵と鶏なのか?
 もうひとつのエンディングを収めたリメイク版ドラクエ4。その隠しボスであるエッグラ・チキーラの二人には謎が多い。というか、謎だらけである。恐らく神やそれに類する存在だと思われるのだが、そもそもどうしてよりによって卵と鶏なのか? なぜこいつらはいつまでも喧々諤々の大喧嘩をしているのか?
 彼らが言い合っているのは「卵が先か鶏が先か」という有名なパラドックスである。どちらか片方が立てばもう一方が立たなくなる、という矛盾した状況を示す言葉だ。これは、5章と6章で異なるふたつのエンディングのことを暗示しているのではないだろうか? また、彼らに初めて勝利したとき、千年に一回しか咲かないはずの世界樹の花が開く。世界樹の花と二人にいったいどんな関係があるのだろうか? 二人と世界樹の間に直接の関わりがあるとは考えにくい。だとすると、「千年に一度」という部分にこの謎を解く鍵がありそうだ。
 もしかすると二人は、時間の流れを司る神の化身なのかもしれない。勇者の強さを認めたからこそ、世界樹の花を使って歴史を変えることを許可したのだ。もしかすると、5の妖精の城から過去のサンタローズへ主人公を飛ばしたのも、二人の働きがあったのではなかろうか。そうして発生するタイムパラドックスを、鶏と卵の問題に置き換えて世界の均衡を保っている存在なのではないだろうか。
 ……もっとも、だったら二人の後ろにいるグランピサロはいったいなんなんだよという話なのだが。
 ちなみに二人が言い合っているパラドックスがふたつのエンディングのことを示しているという根拠はもうひとつある。「ロザリーの説得によってピサロが改心し、諸悪の根源であるエビルプリーストを倒す」これが6章のメインストーリーであり、また開発当初予定されていた4の結末(おそらくはラフ案)である。しかし容量不足によってこの結末は見送られ、デスピサロの死を持って4の物語は幕を閉じる事になった。
 リメイクに当たり、かつては作れなかったこの6章シナリオを復活させることは大きな目玉となる。なにより、あのピサロが仲間になるという展開はリメイク最大の「売り」であり、エニックス的にも絶対に外すことのできない要素であったに違いない。だがここで、大きな問題に直面する。FC版の結末は開発者にとって予定と異なるものであったのだが、予想外にもこのエンディングは「稀に見る切ないエンド」として高く評価されることとなった。オリジナルと異なるエンディングを載せることで、プレイヤー間の意見が真っ二つになるであろうことは容易に想像できる。そして実際そうなった。一見するとくだらない議論をしている二人の姿は、「どっちでもいいじゃないか」という開発者側のメッセージなのかもしれない。
 ……まあ、結末を変えるなら変えるでもっと丁寧に作って欲しかったなぁ、と思わなくもないのだが。