ありがとう、という言葉だけでじゅうぶんだ!
どうも涙腺が硬いのかわからんのですが、映画を見て泣いたことは一度しかなかった*1が、これが二度目の涙。
ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟である。
実は俺、ウルトラマンを良く知らない。小学生の頃やっていた再放送はたびたび見ていたし、おばあちゃんにせがんではビデオを借りてみたりもしていたが、なにぶん小さな子供の頃のこと。今となっては8割以上忘れている。
平成ウルトラマンシリーズだってほとんど見ていない。ティガはともかく、ダイナとガイアの違いとか聞かれてもまったくわからない。
ウルトラマンタロウが兄弟の末っ子だったということを知ったのも実はつい2〜3年ぐらい前のことだ。怪獣の名前なんかこれっぽっちも覚えちゃいない。有名どころを本とかで読んでなんとなく知っている程度、それも小学生のころの話だ。
それにもかかわらず、この映画を観て不覚にも泣いてしまったのである。もちろん、感動の涙だ。何十年という時を経てステキなおじさまとなったハヤタたち歴代ウルトラマン。彼らの戦いぶり、新人のメビウスを励ますその様子、回想シーンでのかつての彼らの戦い。これらのシーンを絶妙なBGMが盛り上げる。こりゃ泣かずにはいられません。回想シーンなんか現物を見たこともないのに「ああ、こういうこともあったんだなあ」と感慨にふけることができる。
だから、この映画は胸を張ってこういえる。
「ウルトラマンが好きだ」という気持ちがほんの少しだけでもあれば、きっとこの映画も大好きになれる。
この映画を観るために、過去のシリーズを引っ張り出して確認する必要はない。
それぞれの兄弟や、今作主人公のメビウスについてあらかじめ情報を集めておく必要もない。もちろんそうしたほうが、より深く楽しめる要素があちこちに詰まっているんだけど、子供のころに見たオボロゲな記憶だけでも十分に理解できるし、そのほうが見ているうちに次々と思い出されてきて、怒涛のごとく押し寄せる懐かしさでさらにホロリと泣ける。これだけシリーズの歴史を感じさせる内容ながら、しかし新ヒーローであるメビウスをしっかり支えている。ウルトラマンだから、最後はハッピーエンドになるのはわかりきっている。なのに、次から次へと二転三転する豪快な展開に大興奮。
これはすごいことだ。たぶんオタクよりも、今の子供たちやそのお父さんのほうがずっとこの映画を楽しめる。もちろん、ライトなファン向けに軽く作っているわけではなく、徹底した作りこみながら、はじめて観る人に対しても易しく作ってあるのだ。そのぐらい、この映画にはウルトラマンという伝統あるシリーズに対する愛が詰まっている。
ウルトラマンが他の長寿シリーズと一線を画している部分に、「どのシリーズも満遍なく今の子供たちに愛されている」というところがある。バイト先のツタヤでウルトラマンやウルトラセブンのDVDをいちばんたくさん借りているのは、俺のようなオタクではなく、今の子供たちなのだ。さすがに下の兄弟たちはちょっとマイナー気味だけどね。どんなに古い作品であっても、熱心に再放送を繰り返し、旧シリーズの特集番組や紹介本などを続々と出していったスタッフたちの努力の賜物なのだ。
賛否両論を呼びそうなCGをフルに使った空中戦闘シーンも、そもそもウルトラマンたちは超音速で飛べるということを頭に入れておけばスンナリと入っていけるし、過去と現在が見事に融合したシーンだと俺は感じることができた。
あえてアラを挙げるなら、今回の正義のチームGUYSの存在感が薄いこと、タロウの俳優さんがスケジュールの都合で出てこないこと、CGが今の時代にしてはちょっとショボイことなどがあげられるだろうが、前ふたつはTV版でフォローされるだろうし(今回の映画は今後のTV版の伏線になっている、らしい)、最後の部分も、この映画のボリューム感に比べればダリー並みに小さい。
平成シリーズや今回未登場のレオ、80のファンも必見。エンディングでひっくり返るぞ。
もちろん、こういう作品はシリーズ40年の伝統があったからこそ可能なことで、これと同じことをもう一度やるには少なくとも10年は待たなければならないだろう。なんとも贅沢な作品である。
そして、この贅沢な企画を完璧な形で仕上げてくれたスタッフの皆さんと、彼らのウルトラマンに対する深い深い愛情に、心から「ありがとう」と。それ以外の言葉は、もはや不要なのだ。