FF8はクソゲーだったのか

 FF8の正しいあそび方。

  • とりあえずドローや召喚で当座をしのぎつつ、APやアイテムを集める。
  • APがたまったら、「精製」のアビリティを使ってアイテムから大量に魔法を作り、装備。
  • 「エンカウントなし」のアビリティを使って快適にダンジョンを探索。
  • ボスは弱点を見て、最適なジャンクションをして一気に倒す。

 以前にどこかのサイトで読み、目からウロコが落ちたのだが、URLを失念してしまったため、ここに概要を書かせていただく。
 FF8は「システムの裏をかく」ゲームである。
 普通に考えれば、「エンカウントなし」というアビリティをごくごく初期のうちに用意してしまうのは、コンピューター・ロールプレイングゲームというジャンルを放棄していることの宣言である。
 だが、これすらもスタッフの意図するところだったわけだ。
 魔法の原料となるアイテムの大半は、モンスターが持っている。つまり、戦わなければ魔法は手に入らない。魔法を装備できなければ、主人公はいつまでたっても強くなれない。
 このゲームにおける「強さ」とは、装備した魔法である。改造した武器であり、身につけた必殺技である。経験値というものは、この敵から入手できるアイテムや魔法の種類が変化するための指針でしかない。
 いや、ここにも大きな落とし穴があった。
 敵のレベルは、現在出撃しているパーティーの平均レベルから算出される。タクティクスオウガに似ているが、ひとつ決定的な違いがある。タクティクスオウガの敵のレベルは、控えメンバーも含むパーティーでもっともレベルの高いキャラから算出されているのだ。
 たとえば、タクティクスオウガの場合、レベル20、レベル10、レベル1、のパーティーだったりすると、レベル20の敵の軍団に襲われる羽目になる。だから、全員のレベルが20にそろえられていないと、勝つ事は難しい。
 だが、FF8の場合、上記のパーティー編成だと、レベル10の敵しか出てこないことになる。この場合なにが起こるかというと、つまり「レベル20のキャラだけを出撃させて、レベル20の敵から強力な魔法やアイテムを手に入れ、それをレベル1のキャラクターに装備させ、今度はレベル1のキャラクターだけで出撃し、一気に攻略する」というあそび方が可能になるのだ。
 つまり、パーティーのレベルはそろえないほうがよいのである。
 じつは一見ストーリーとは何の関係もなさそうなカードゲームも、キャラクター育成に大きな意味を持つ。「カード変化」である。こいつを応用すれば、Disc2の時点で最強の武器ライオンハートを手にすることだってできるのだ。
 一見手軽に使えそうなドローは、魔法を手に入れるにはもっとも効率の悪い方法だったのである。ケアルガを100個ドローするのは途方もない作業のように見えるが、じつはテントを100個精製してしまえばすぐに用意できるのだ。逆に持ちきれなくなってしまった魔法は、アイテムにもどしてしまえばいい。一見ノーリスクで撃ち放題のように見える召喚魔法も同様、あれはじゅうぶんな数の魔法がそろっていないときに使う代理の武器に過ぎなかったのである。
 
 では、なぜここまで徹底したシステムを作りこんでいながら、FF8クソゲー呼ばわりされる羽目に陥ったのか。
 チュートリアル不足もある。ふつう「ここの敵は炎に弱いぞ」といわれれば、ファイアをドローして唱えまくるだけだろう。属性攻撃のスロットにファイアを大量に装備して、炎属性の通常攻撃で一気に片をつけるという発想はそうそう生まれるものではない。オンラインヘルプの項目も用意されているが、普通のプレイヤーは誰もそんなところは読まないし、読んだところでその通りに実行できるとは限らない。実際にそういうステージを用意して、実戦を交えながらさりげなくプレイヤーに身をもって理解してもらうしかないのだ。
 だが、それでも叩かれた理由はもう「FFだったから」としか言いようがない。「FF=RPG=経験値をためてレベルアップ」という図式が、ほぼ全てのプレイヤーに刷り込まれていたため、プレイヤーの誰もが、ジャンクションシステムの本質を理解できなかったのである。かく言う俺もそうだった。その証拠に、はじめて触れたゲームがFF8だったという人の多くが、FF8を「おもしろかった」と評価している。RPGというジャンルになじみの薄い海外でも、FF8は高い人気を誇っている。
 もしこれが「ファイナルファンタジー8」というタイトルではなく、「なんとかかんとか物語」とかだったら、こんなに叩かれることもなかったろう。こんなに売れることもなかっただろうが。
 FF8の最大の失敗は、このゲームが従来のシステムを真っ向から覆す、きわめて画期的なゲームであることを、プレイヤーに伝え切れなかったことにあるのだ。

(読み込みの長さ、シナリオの練りこみ不足、操作性の悪さも、もちろんあるけどね……)