購入前にひとこと

ドラクエ5をやっていて、一度だけ涙したセリフがある。
「ここの酒場は酒はうまいがメシはまずいのう。何じゃ物ほしそうな目をして、なら食ってみなされ。
……なんと、うまいと申されるか? いやはや、おぬしはよっぽどひどいものを食ってきたんじゃのう……」
記憶がおぼろげなので細かい部分は間違っているかもしれないが。

ただのジジイの戯言のように聞こえるが、これが主人公の置かれた境遇を考えると非常に重いセリフに聞こえるのだ。
主人公は物語の中盤で敵に捕らえられ、奴隷として10年もの間働かされることになる。
その様子は非常に丁寧に描かれていて、およそドラクエらしからぬ凄惨なものだ。
そして何とか必死の思いで敵の居城から脱出し、海を漂流して海辺の修道院にたどり着く。
その修道院を出たすぐの街でこの老人とであうのである。
そのとき、おそらく主人公や同じく捕らえられた人々が体験したであろう10年もの地獄の日々や、やっと平和な世界へと戻ってきたんだという安堵、そんなことも知らずにのんきに暮らしているこの老人への複雑な思いなどが一気に呼び起こされたのである。

ジジイの一言だけでこれだけの思いを引き出せるRPGはそうはいない。
だから俺はドラクエが好きだ。

RPGのシナリオはキャラクターだという。
でもそれは、萌え萌えなデザインだとか、主人公たちの詳細なプロフィール設定だとか、雑誌の見出しに載りそうなキメゼリフとか、声優とか、
そんなんじゃなく。
ただの一言だけ、他愛のないセリフを言う村人達が、いかにイキイキと描けているか。
その世界にちゃんと「生きて」いるか、だと思うのだ。
だから俺はドラクエが好きだ。

…だから俺はガンダムも好きだ。