藍升

 ちなみに初回の相手はやよいでしたとさ。理由は自分でもよく分からんが、あの中ではいちばんティンと来たので、本能に従うことにした。けなげな子が好きなんだ。
 それでもおっかなさのあまり遅々として進まない俺はダメダメP。ボイトレ難しすぎるよ。
 音ゲーには素人とは言えど毛が生えている程度の自負はあったのだが、バックミュージックが邪魔をしてまったくリズムが取れない。せめてメトロノームぐらい、くれ……! バッドとノーマルが半々ぐらいなんて自分の目を疑ったわい。
 初回プレイは練習のようなもの、と分かってはいるのだが……
 初戦敗退(チュートリアルのためオナサケで合格)のトラウマから、次のオデをいちばん簡単そうなやつにしてみた。すると対戦相手が乱入。ヤベェオンラインにしっぱなしだった! 上位三位合格とはいえ、初の対人戦である。緊張が走る。
 知らぬ人はおらんだろうがいちおう説明しておくと、藍升のオデは、それぞれボーカル、ビジュアル、ダンスの三つの項目に対していかにアピールできたかを競うモノである、らしい。この三つの優先順位は流行によって変動し、今日はビジュアルが流行しているのでそれにたいして強くアピールできれば高得点を得られる、という仕組み。ただし、あまり偏ったアピールをしすぎると、その審査員は飽きて帰ってしまい、ポイントも全て無効となってしまう厳しいルールである。しかも審査員の興味は参加者全員で共通なため、自分にその気がなくても相手が無理やり審査員を退場させてしまうこともありうるのだ。そしてこのアピール合戦を3ラウンド行い、得ることのできたポイントの総合点を競う形となる。まぁ色々と細かいルールはあるんだが、とりあえずそういうもんだと思っていただきたい。というか、俺がそれ以上あまり理解していないので。
第一ラウンド。流行一位(ビジュアル)はとれず。ほか二つの項目ではなんとかポイントを獲得できたものの、この時点でビジュアル点を稼ぐのは難しいかも知れない、と不安になる。
第二ラウンド。ビジュアル審査員がいきなり帰る。おのれ、この日のために気に入っていた前の服からわざわざ着替えたというに。服装によってパラメータに補正がかかるため、ビジュアル能力に不安があったのでやむなく着替えたのだが……っつか、あの服はぜってぇビジュアル重視じゃねえっての。ともかく、どうやら対戦相手がビジュアルへのアピールをやりすぎたらしい。前ラウンドでビジュアル点を取り逃している俺にとっては幸運だが、相手がその逆だとは限らない。緊張したまま第三ラウンドが終了する。
第三ラウンド終了時の暫定ランキングが4位だったため「ああこりゃ負けたな」と思っていると、なんとトータル1位でランクイン。嘘だあ、と思っていたが対戦相手は最下位という結果に。相手は6戦ぐらいしていたはずなんだが、と思って戦績をチラ見してみると、最近の6戦のうち2勝しかしていなかった。エントリー時のコメントにはけっこう挑発的な文章が載っていて正直ビビッていたのだが、よくよく考えてみれば6戦以上戦ってなおこんな初心者向けのオデに参加してる時点でアヤシかったのかもしれない。
 それにしても、なんだったんだろう。